アーティフィシャル・ダーズンローズ

ダーズンローズ達の偽物を討伐する話

視点…エルピス=ローズィア


「……むにゃ」


「いつまで寝てるんだい、エルピス君?もう朝の9時だぞ。」


「んぅ…?」


誰かが私を呼ぶ声が聞こえる…だぁれ?


「エルピスく〜ん?」


ウェイターさんかなぁ〜、またご飯いっぱい持ってきてくれるのかなぁ…


「…えへへ…でももうお腹いっぱ〜い…食べられない、よぉ…」


でも美味しそうだから、ついつい手を伸ばして食べちゃう〜…

これは何かな、焼きそばかなぁ?でもなんかモサモサする〜…


「もう食べられないとか言いながら、僕の髪の毛を掴んで口に入れないでくれるかな?僕の髪の毛は残念ながら食べ物じゃないんだ。」


さっきからウェイターさんが私に話し掛けてくるのはなんだろうな〜、さっきまでご飯を黙々と運んでただけなのに急にどうしたんだろ〜…


「ん〜〜〜…な〜に〜………」


もごもごと口を動かしながら、重い瞼を開けると…

目の前にジャックさんがいたの!


「…わぁあああぁあっっっ!!?!ジャックさん!!?!」


慌てて口の中にあるジャックさんの髪の毛をペッ、と吐き出す。

あーあ、こりゃ大惨事だなぁ。と独り言を呟きながら私の涎でべちょべちょになった髪をハンカチで拭き取り、ヘアミストを適量吹き掛けた後私の方に視線を戻す。


「やぁエルピス君、おはよう!いくら”船の中”とはいえ、鍵をかけないで寝るのは僕のような不審者を招くから気をつけた方がいいと思うよ!まぁピッキングする手間が省けたのはありがたいが…あと、今の時期の夜は冷え込むから腹巻きをして寝た方が翌朝、後悔はしないと思うね。あと人の髪の毛を…」


「待って待って?!なんでジャックさんがここにいるの!?!」


ジャックさんは一瞬だけど きょとんって固まっちゃったの。

あれ、私何か間違った事言っちゃったかな…?あれあれ?


「…あー!君が僕の髪の毛を食べるもんだからすっかり本題に入るのを忘れてたよ!思い出させてくれてありがとう、エルピス君。」


「いえいえ……?」


いえいえであってるのかは、わからないけど…。


「そろそろ目的地につくから起きてない子達を起こそうとしたんだよ。まぁここまで起きなかったのは君くらいだけど。…それとも、忘れてしまったのかい?僕と僕の同期達で船を作ってこれまで行けなかった地方へ航海の旅も出来るようになった事を。」


「…あー!!そうだった!思い出した〜!それで、ジャックさんは船が正常に動作するか仕事をお休みして着いてきてくれる事になったんだよねっ!?」


私ったらなーんでそんな事も忘れかけちゃったんだろ!

いけない、いけない!


「そうだよ!全て完璧に思い出してくれたようで何よりだ。ほら、身支度を整えて船から降りる準備をしちゃおうね。」


ジャックさんに肩をポンポンと叩かれる。


「はーい!」


じゃあ、一旦ご機嫌よう!と言い残しジャックさんが部屋から出ていくと、私は急いで顔を洗いに行った。

…ところでジャックさん、なんで私の部屋に入ってきたんだっけ?

まぁいいや!早く準備しちゃお〜!

桜とか、和とか全然分からないからから早くみたいなぁ、リアと一緒に情報集めながらぐるぐる探索もしたい!楽しみだなぁ!


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「全員船から出てきたようだね。諸君、ここがロザヴァナだ。そこらにボンボン植えてある薄い桃色の花を咲かせている木があるだろう、あれが桜と言うんだ。」


私とリアは桜を見て綺麗だねー!って笑ってたけど、他のお兄ちゃんとお姉ちゃん達は桜に全然見向きもしてない。

お兄ちゃんとお姉ちゃん達はかわりばんこで、海に出てくる魔物を退治していたみたい。

私とリア、ハニーベルちゃんはまだ子供だから寝てていいよって部屋に戻されたんだっけ。

何人か眠たいのか立ったままうとうとしてるなぁ…大丈夫かなぁ?

特にエムロードお兄ちゃんは立ったまま寝ちゃってるし、グラティアお姉ちゃんはふわぁ、と欠伸をして目をしぱしぱさせてる〜…

遅くまで大変だっただろうなぁ…。


「ちなみにだけど、ここでは街の人達の平和の為か魔法や能力が使えないから気をつけたまえ。魔物が出てきたら、己の力だけで戦うように。武器なんて見たら、恐らく街の人は腰を抜かすだろうから懐なりバックなりに隠すことをおすすめするよ。」


え、魔法が使えないの!?

魔法使いなのに、魔法が使えないなんてあんまりだよー!

う〜、困ったらジェンナちゃんとスヴァーレットお兄ちゃんを頼ろう…

っていけない、いけない。

気持ちを切り替えないと!


「じゃ、僕達はそこら辺をフラフラと観光してるから君達は情報収集を頼むよ。何かあったら、相談には乗るよ。それじゃ、また後でね。」


はーい!と、私は元気よく返事をした。

皆が街の人達に聞き込みをする為にゾロゾロと別れる中、ジャックさんはお店の柱に貼ってある貼り紙に目が止まっていた。


「…おや。これはこれは…」


「ジャック、いきなりどうし…。…え?」


「…あらあら?面白い事になりそうですね…?♪」


ジャックさん達が何か呟いてたけど、いーや!

リアと一緒に早く聞き込みしたいし、後で聞こうーっと!


「ねぇねぇリア、街の人に聞き込みしよー!」


「いいよー!じゃ、あそこの変わったお洋服を売っている所から聞こー!」


リアと手を繋いで ててて、と小走りをしてお店に入る。

あっちの街では見たことない服が沢山あるなぁ、わぁ〜買えなくても良いから1回着てみたいなぁ〜…

お店にズラリと並ぶ色とりどりの服を眺めていると 年配の店長さんらしき人が奥から出てきた。


「こんにちはー!」


「あら、坊や達 いらっしゃ…!?」


店長さんは驚いた顔をして私達を見た。


「こんにちはー!あのね、聞きたい事があるんだけど〜…あれ?」


店長さんは驚いた表情から一変、怒りを露にした。


「坊や達、これは何の真似だい?わざわざあたしらに捕まりに来たのかい?御苦労な事だね。」


「え?」


お店にいたお客さん達が、一斉に私とリアを睨んできた。

な、なぁに…?なんか怖い…かも…。


「お前達だな!?最近、畑を荒らしたり金品を盗んでいる強盗集団は!?」


…え?そんなことしてない!だってここに来たのは初めてだよ!?

反論しても、誰も言う事を聞いてくれない。

寧ろ、もっと怒らせちゃったみたい…。


「嘘付かないで頂戴!!今すぐ盗んだ物を返して!!」


「畑の農作物も弁償しろ!!」


本当に何の事〜!?!知らないよ〜!!

騒ぎを聞きつけた人達が、私達を見るなり一斉に囲んで取り押さえてきた。


「や、やだ!やだやだ!やめて!離して!!」


「エルピス!!ねぇ、離してよ!!僕、何も悪い事してないもん!エルピスに酷い事したら僕が許さないんだからね!!!」


少ししたらなんだか警察っぽい人が沢山来て、私とリアを縛り上げてちゃった。


「お前達だな、ここ最近の事件の犯人は。口答え無用、ほらさっさと歩け。」


リアと一緒に小脇に抱えられちゃって、どこかに連れて行かれちゃった。

事件なんて知らないのに、ど、どうなっちゃうの〜〜!?

誰か、誰か助けてぇ〜〜!!?


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ギチッ…

手と足を縄でギチギチに縛られて、リアと一緒に牢屋に放り投げられた。

どうやら、お兄ちゃんとお姉ちゃん達も捕まっちゃったみたいで皆 牢屋敷っていう牢屋みたいな場所に入れられちゃった。

この世界は魔法や能力が使えないってジャックさんは言ってたし、武器も捕まった時に奪われちゃったみたいで、もうほとんど打つ手がないって…

どうしよう…このまま捕まってたら夫婦探しなんてとてもじゃないけど出来ないよぉ…もしかして、このまま痛いことされちゃうのかな…

そんなのやだ!誰かここから出して!

悲痛な叫びは、お兄ちゃんやお姉ちゃん達以外には誰にも届かない。

そんな中 コツコツ、と足音が聞こえてきた 誰かがこちらへ向かってきている。

私達を見張る看守って人達かな、もうご飯の時間だっけ…時計がないからわかんないや…

様子を見ていると、看守さんっぽい人達と見慣れた人達がこっちに向かって手を振ってたの。

…あれ、もしかして…?


「いやぁ、大変面白い物を拝見させて頂きました♡こんな事もあるんですね♪」


白い服装に身を包んだお兄ちゃんは、見世物小屋の中で芸を披露する動物達を見る客のように私達を見てニコニコと笑った。


「…大変だったな。」


「やぁ、諸君。どうやら…かなりまずい事になったようだね?」


白い髪のセーラー服のお姉ちゃんと髪が長くて背の高いお兄ちゃん…まさか!まさか!


「オロニさん!?ニュロさん!?それに、ジャックさんも!」


助けに来てくれたのかな!?ここから出してくれるのかな!?

期待に胸を膨らませて、ジッとジャックさんを見つめる。


「看守君。それじゃあ、頼むよ。」


「かしこまりました…。」


看守さん達の内の1人が、鍵束を取り出して その中の1本を鍵穴に差し込む。

ガチャ、鍵が開いた。

そしてジャックさんだけ、牢屋に入ってきた。

ジャックさんは、私達の顔をジッ…と見つめた後 笑っているけど どこか困った顔をしながら話を始めた。


「災難だったね、諸君。いやぁ君達が罪を犯したのが僕は到底、信じられないもんでね?独自に調べさせて貰ったけど、どうやら最近ロザヴァナに輸入してきた薔薇の造花…ポリエステルやポリエチレンで出来た偽物の花、アーティフィシャルフラワーと言った方が分かりやすいかな?それが何らかの影響を受けて君達に擬態して、金品の強盗や畑の土壌荒らしの騒ぎを引き起こしてるらしい。その何らかの影響は、僕にもよく分からないけどね。」


アーティフィシャルフラワー…?ポリエステル…?

難しくて私にはよく分からないけど、多分…多分だけど何かが私達に化けていたずらしちゃって、皆を困らせてるって事だよね?

酷ーい!酷すぎるよーっ!私達、何も悪い事してないのにーっ!

ムキーッ!


「ふふ、君達は潔白だ。この僕が保証しよう。」


ジャックさんは穏やかに微笑んで、リアと私の頭を撫でてくれた。

やったー!ジャックさんが言ってくれたから安心だねー!

と、喜んだのも束の間。


「…ただね。」


コホン、とジャックさんは咳払いをする。

そして、耳を疑うような言葉を出す。


「別の都市から来た君達をそう簡単に信じられるか、だってさ。」


「え…」


それじゃあ、やっぱり牢屋からは出られないんだー!?

やだやだっ!!ここから出たいよ〜!!出してぇ〜〜!!

リアの手をぶんぶんと振り回しながら、このどうしようもない抑えられない気持ちを言葉として大声で吐き出す。


「まぁまぁ!話は最後まで聞くべきだ。どうやら、ここでも便利屋をしている僕の事を知っている人がチラホラいてね?僕の顔に免じて、ある条件をつけて君達を開放して貰う事で話が決まったんだ。」


「本当!?本当に!?」


じゃ、じゃあやっぱり牢屋からは出られるんだ!?

流石、ジャックさーん!


「あぁ、嘘じゃないよ!さて、その条件が何なのかを今から説明しようか…」


そう言うとジャックさんはどこからか細長い木の棒の束を取り出して、真ん中からパキッ、と2つに折り始めた。

何本かは先っちょを赤い油性ペンで色を付けてるけど…なんだろう、新しい玩具かな?


「リア、あれなぁに?」


リアはうーん、と考えた後 ピン、と閃いたような顔をした。


「あれは…割り箸だぁ!僕、本で見たことあるよ〜!」


「カメリア君、ご名答!諸君の中から誰か3人、この牢屋に残ってもらう事が条件だ。所謂、身代わりだね。12本のバラバラになっている割り箸がここにあるだろう?先端に色がついていない割り箸を引き当てたら牢屋から出て偽物を倒して貰う、ただし…先端が赤くなっている割り箸を引き当てたら牢屋に残って貰うという至ってシンプルなくじだ。…まぁ今回は初回だし待ってる間3人で寂しく牢屋の中は辛いだろうからね。僕もそこまで鬼じゃないよ。…だから、僕ら3人の内から1人、牢屋での話し相手として付き合おうか。」


……えー!?私達の中から3人も身代わりを出すのー!!?

なんでそんな酷いことするのー!?

でもこうしないとここから出してくれないんだよね、うぅ〜…

なんて考えていると、牢屋の外にいるオロニさんが話に入ってきた。


「あら、では仮に私が当たってしまうとしばらくジャックと離れてしまう可能性もあるのですねぇ?寂しくなっちゃいますねぇ…。」


「そうなっちゃうね?逆に僕が当たると、仮に偽物討伐してる9人の内誰かが死んでしまったら…牢屋からそうホイホイと出るわけにもいかない故に蘇生が出来ないのが悩みだね。牢屋で3人に付き合うのにリスクが1番低いのはニュロだけど、まぁこういうくじも楽しもうよ。これで最初で最後になるからさ。いいだろう、兄さん?」


「…そこまで言うなら仕方ありませんね♪お前に従いましょう♡最も、最初から聞く気でいましたけど♡」


ポカン…としていると、ニュロさんが更に話に割って入ってきた。


「無駄話は良いからさっさとくじを引かせてあげたらどう?」


「おっと!ごめんね?つい話が長くなっちゃった!さてさて…」


ジャックさんは割り箸の束を均等になるように手の中で混ぜて、私達の前にその束を差し出す。


「さぁ諸君、己の直感を信じて くじを引きたまえ。」


どっちになっちゃうの〜!?

でもでも、リアと離れたくないし皆を困らせてる私達の偽物が暴れてるのはぜったい、ぜーったいに許さないからこてんぱんにしたい!でも、くじが当たっちゃったらリアと離れちゃうんだよね…うぅ…そんなの嫌だけど〜、でもそしたらそしたら、あと2人お兄ちゃんかお姉ちゃんがいるから寂しくないかな、ジャックさん達の中からも誰か1人は残るし大丈夫かなぁ…?

でも!やっぱりリアと一緒にいたいから、絶対ハズレを引かなくちゃー!

私は自分を信じて、くじに手を伸ばした。

どうか、ハズレますよーに!


「いやぁ、諸君!ご苦労様!いやはや、想像以上に早い討伐完了で僕がびっくりしているよ。」

牢屋から出たジャックはパチパチ、と軽い拍手をダーズンローズ達に送る。


「僕もただ牢屋に入れられていた訳じゃないよ?良い情報が看守君達から聞けたよ。聞きたい?

カラカラと笑いながら、ダーズンローズ達の前でヒラヒラと紙切れを見せる。


こっちは仲間が数人いない中頑張って討伐したのに…とムッと睨むと、ジャックは降参のポーズでははっ、と笑いながら紙切れを開いた。


「冗談だよ!そんなムキになって怒らないでくれよ。 …どうやらご夫婦は砂漠の地、 ザンスズィアに向かったようだよ。 看守君以外にも街の人が数人ご夫婦を見たと言っていたから、情報は確かなはずだ。」

ザンスズィア…砂漠…またしても聞き慣れない言葉だ。


「簡単に言うと、 とーっても熱い場所かな?夏の季節が可愛く見えるくらいそれはそれは熱い場所!」


どうやら、体力勝負になりそうな予感…?


きっと、 ジャックが言うんだから想像もつかないとっても熱い場所なんだろう。


しかし、ここで諦める訳にはいかない。


なんとしてでも夫婦を連れ戻すのだ。


今度こそ、今度こそご夫婦に会えると信じてダーズンローズ達は船に乗り込むのでした。


アーティフィシャル・ダーズンローズ 終


行動不能者


オランジュ・ロジエ

エムロード

ジェンナ・グロリア

ジャクリーヌ・スキュア=オーバラライデン(特殊枠)


戦闘 リザルト


1日目

・スヴァーレット

オランジュの偽物を逃してしまった…

・グラティア

フォソルの偽物を倒した!

・グレイス

負傷したがカメリアの偽物を倒した!

・フォソル

エリューの偽物を倒せず殺されてしまった…(あと4回)

・セアリアス

スヴァーレットの偽物を倒せず混乱状態になってしまった…

・エリュー

グラティアの偽物を倒せず深い傷を負ってしまった…

・カメリア

エルピスの偽物を怪我をしたけど倒せた!

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3体撃退!


2日目

・フォソル

ハニーベルの偽物を倒した!

・スヴァーレット

オランジュの偽物を倒せず逆に殺されてしまった…(あと4回)

・グラティア

スヴァーレットの偽物を倒した!

・セアリアス

エムロードの偽物を倒せず火傷状態になってしまった…

・エリュー

ジェンナの偽物をギリギリで倒せた!

・カメリア

グラティアの偽物を倒した!

・グレイス

グレイスの偽物を倒した!

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5体撃退!


3日目

・グラティア

エムロードの偽物を倒した!

・グレイス

オランジュの偽物を倒した!

・セアリアス

セアリアスの偽物を倒せず毒状態になってしまった…

・エリュー

セアリアスの偽物を倒した!

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3体撃退!


4日目

・グラティア

エリューの偽物を怪我をしたけど倒せた!

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全員撃退!