ようこそ薔薇の国へ

色々な世界から旅行客が来る話

「…フレゥール大陸の宣伝?」

リクオルに体を返してもらい、少しずつではあるが仕事を再開したジャックはひょんなことからジオンモナン大統領に呼び出された。

「えぇ、もうすぐ旅行客歓迎キャンペーンを実施する予定でして。そこで、便利屋の貴方に旅行客を呼び込んで欲しいのです。飛行機の代金を10%オフにしたり無料でウェルカムドリンクをつける等どんな方法でも構いません。貴方に是非この仕事を頼みたいのです。」

大統領の大胆かつやりがいのある面白そうな依頼にとても興味を持ったジャックはすぐに承諾した。

「なるほど、実に面白い!その依頼、引き受けよう!」

代金は後からこちらで決めることを条件に契約書にサインを貰い、すぐ準備に取り掛かるためその場を後にした。


2日後の夜、テーブルに宛先不明のありったけの手紙が用意できた。

…ニュロとオロニを呼び出した手紙と同じ要領で自身の魔力を手紙に載せてどこかの誰かの元に運ぶつもりらしい。

両手に沢山の手紙を抱え夜の街に出ると、ありったけの魔力を沢山の手紙に載せて運んでいった。

「…この手紙がどこの誰に届くのか楽しみだね。」

夜空の遥か彼方へ飛んでいく手紙を見て、ジャックはニコニコと笑った。


仕事や学校、毎日の生活に少し疲れを感じているそこの貴方

一人でも、友人でも、仕事の同僚でも、あるいは大切な人とちょっと一息ついてみませんか?

近い内に貴方の元に差出人不明の手紙が届くでしょう。

その手紙の中には薔薇の国へと誘う素敵な招待状が入っているかもしれませんよ?



「便利屋殿!この度はありがとうございました!おかげでキャンペーンは大成功となりましたよ!」


ジオンモナン大統領は紅茶を嗜みながら、満足そうに外を眺めている。

ジャックの魔力を乗せた招待状をどこかの世界へ飛ばす作戦は無事に成功したようで、外は沢山の旅行客で溢れていた。


「それにしても、翼が生えていたり不思議な力を使っているとお聞きしたのですが、随分と不思議な旅行客が集まったのですね?」


…そう、招待状を受け取った人の中には人間ではない旅行客もいるのだ。

招待状を受け取り、この国にやってきた旅行客がトラブルを起こした報告はないので まぁ、良しとしよう。


「ふふ、たっぷり楽しんでくれよ。旅行客君。」


大統領が紅茶を嗜む傍ら、彼は満足そうにコーヒーを嗜んでいた。


ようこそ薔薇の国へ 終


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